Amygdala

Turns on

荒川で泳ぎながら原始的ホモ属の系統樹の見直しについて考えてみた

拡張少女系トライナリー」のサービス終了(参照:「拡張少女系トライナリー」という早すぎた恋愛RPG、或いはアイロニカルな没入について - Amygdalaという精神的ショックによって不可逆的にその日の仕事をバックレた私は、禊のため全裸になって荒川で泳いでいた。鶴田謙二の漫画に出てくる長髪ストレートそばかすの女の子もし知らないならエマノンシリーズは読んだ方が良いなら肉体の衝動に従うだろうし、私もそうしようと思ったのだ。

この川には近くにある総武線新小岩駅にて轍の鬼と化した多数の霊魂が流れているとかいないとか言われているが、その人肌を思わせる水の暖かさは夏を思わせるに十分であるし、この富栄養化の決して美しいとは言えない汽水域と触れ合ってみて、ふと私は人類の起源について想いを馳せてみることにした。

 

ご存知の通り我々は生物学的にはホモ・サピエンスという学名で括られた個体群である。800万-600万年ほど前に東アフリカでチンパンジー(パン・トログロディテス)の祖先系統(チンパンジーそのものと分岐したわけではないことに注意)と分岐した系統、通称ホミニンは20種類以上の様々な猿人、原人、旧人を生み出してきたが、いやしくもその最後の生き残りとして君臨する我々は今日も地球にしがみつきつつ、人造娼婦の二次元HENTAIイラストでマスをかきながら終末の夕日を眺めている。よくぞ地球に生まれけり、である。

 

我々が属するホモ属は、一般的にはアウストラロピテクス属から発生し「ホモ・ハビリスホモ・エレクトスホモ・サピエンス」というように直線的な進化の道筋で説明されている。時代の経過とともに進歩的特徴を持った化石が発見され、祖先的な形質を持つ化石は発見されなくなっていくのでこの大雑把な分類は大まかには正しいのだが、実際のところほとんど部分的にしか発見されない化石を頼りに同一種を判別すること自体が難しく、アウストラロピテクス属-ホモ属間の移行的化石やハビリス的人骨-エレクトス的人骨間の移行的化石なども存在するために分類は困難を極めている。ここで細かな特徴から種を細分化する考えをスプリッター(splitter)と呼び、種をまとめ大まかな流れでとらえる考えをランパー(lumper)と呼ぶ。

発見される化石が極端に少ない古人類学においては、研究者の思想や意図が分類に大いに影響するため、しばしばバイアスめいた命名や分類が行われることがある。その中でも謎に包まれているホモ属の起源については本丸の扱いで、各研究者の様々な学説が争っている状況であった。

 

200万年前から300万年前のヒト属の化石は、極めて珍しい。新発見の標本の分析で共同責任者を務めたアリゾナ州立大学人類起源研究所のビル・キンベル所長は、かつてこう言っていたことがある。「(その時期の化石を)すべて小さな靴箱に入れても、まだ一足分ぐらいの余裕がある」

最古のヒト属化石を発見、猿人からの進化に新証拠 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 

300万年前というのはLucyで知られるアウストラロピテクス・アファレンシスの記録が出土する最末期の年代で、200万年前というのはホモ・ハビリスホモ・エレクトスの記録が一斉に出土し始める年代である。ホモ属の起源について最も重要な時期の化石が絶対的に不足している中で(実はこの時期も南アフリカアウストラロピテクス・アフリカヌスや東アフリカのパラントロプス属の化石は割と出土している)、有力視されていたのが東大の諏訪元博士らがエチオピアで発見したアウストラロピテクス・ガルヒ(250万年前)や、リー・バーガーらが南アフリカで発見したアウストラロピテクス・セディバ(198万年前)などの後期アウストラロピテクスであった。どちらも新旧の特徴が入り混じった移行期的人類だが、ホモの直系祖先にしては特殊化しすぎ、時代が若すぎる、などという指摘も出ており決定打に欠ける状態だった。

 

そこに文字通り一石を投じたのがエチオピアで2013年に発見されたLD 350-1と呼ばれる化石だった。280万年前とされるこの化石は5本の歯が埋まった下顎骨の左側だけ、という部分的なものだったが、臼歯の形状や歯に対する顎の傾斜角度のゆるやかさは明らかにホモ属の特徴だった。Paleoantropología hoy: LD 350-1. El fósil de Homo más antiguo data el origen del género antes de 2,8 Ma.

 

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ホモ属の起源を50万年も更新したこの化石によって、後期アウストラロピテクスからホモに移行したのではなく、末期アファレンシスという比較的古い段階でホモの系統が分かれたというわけだ。

そして鮮新世-更新世にかけての不安定な気候条件の中、地域によって分かれた個体群が交雑したり、少し進化しては滅んだりを繰り返すうちにハビリスやルドルフエンシスなどの移行期的ホモ属(大きな脳、石器使用などの特徴を有する)が生まれ、その中のどれかの系統からホモ・エレクトスという移動能力や社会性に優れた現生人類の雛型となる種が誕生したということらしい。

 

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 エレクトスは初めてアフリカ大陸を出た人類と言われており、早くも180万年前には現在のジョージア、ドマニシにて狩猟生活を送っていた形跡がある。歯を失いつつも仲間からの介護で生きながらえたらしい個体の頭骨なども発見されており、高い社会性もうかがえる。

アフリカからヨーロッパまでたどり着いた彼らは、きっと今の自分のように大きな川も泳いで渡ったことだろう。そう思うと気分が少し落ち着いたのもあり、仲間が持参したディジュリドゥを河原で一心不乱に吹いた(パンツは履いた)。これもなかなかの没入感で、吹いている間は辛い気持ちをごまかすことができた。

 

しかしサービス終了までの日々でこの気分との折り合いをつけねばならない。ひとしきり吹き終わって深呼吸をしていると、犬の散歩をしている男性がにこやかに近づいてきて

何の草やってるんですか?

とだけ訊ねて去っていった。

 

ゾルタクスゼイアンへの道は遠くなりにけり、である。