Amygdala

Turns on

コウモリと1週間暮らしてみた

友人にコウモリを預かってほしい、と頼まれた。

海外旅行中の預かり手がいないとのことだったので特に断る理由もなく引き受けることにした。とはいえコウモリの世話は初めてだし、猫(ブリティッシュショートヘアーの少し不愛想な個体)を飼っているので隔離には細心の注意を要する。以前は自分もアクアリウムや爬虫類飼育など幅広く行っていたが、安定して家に帰れない用事が増えたこともあって手のかからない猫との生活のみに甘んじ、正直言って小動物飼育の勘は鈍っている。

訊いたところこのコウモリはエジプシャンルーセットオオコウモリという種類で、いわゆるフルーツバットの一種とのことだった。輸入が禁止されてからは国内ブリーディング個体が不定期に出回るだけのやや珍しいペットらしい。しかもメスだと思って名前まで付けたにも関わらず、無情にもきんたまが日々膨らみちんこも伸びてきて最近オスだと判明したのだという。

 

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◆ずっとさかさま 

 

ケージは100円ショップのワイヤーネットを組み立てたものに新聞紙を障子のように張り付けた姿をしており、ケージ内にぶら下がっている四角いフェルト製のハウス(友人の自作)内で逆さまにぶら下がって過ごしている。

夜になるとケージから這い出してきて適当に刻んだリンゴやらバナナを予想以上の量食べるが、あまり水は飲まない。水分は果物から摂れるのか、糞尿も体の割に大量に排出する。以下のページに載っている通りだが、犬猫のようにトイレを覚える生物ではないのでケージに敷いている新聞紙はかなり汚れる。敷いてある新聞紙の交換は毎日行う必要がありそうだ。

とりあえず米袋を敷いて床板への糞尿滲出予防としたが、さかさまで尿をするので壁にかかってしまっていた。これからは酔っ払いを相手にする心構えで世話をするべきと実感する。

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フルーツバットの飼い方|ペットコウモリの繁殖や餌・費用 | 珍動物

 

さて、運動をさせてほしいとのお願いもされたのだがあいにく密閉された部屋がなく、下手に高いところに飛ばれたら回収するすべもないので困ってしまった。苦慮の末風呂場にバスタオルを垂らしてケージを開けてみたが警戒してまるで出てこない。

とりあえずナシを与えるとよく食べるので何となく好きな果物の傾向がわかってきた。酸味が少なく、酵素の効きが弱い果物ならリンゴ、ブドウ、ナシ、メロン、バナナ、サクランボ等幅広く食べるようだ。とりあえずスイカやパイナップルは食べない。

 

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 ◆エサは大きめに切ってもこうしてラッコのように食べるので問題ない、足で抑えてるのがかわいい

 

エサには栄養バランスのためにゴートミルクやローリーネクターを添加することが推奨されているが、ローリーネクターはどうやら消化されず功を奏していないことが明らかになった。こうした勘違いは飼育方法が確立されていない生物ならではで、面白い部分であるといえば面白い。

一週間もするとエサのタイミングやらを覚えてきてカゴから顔を出したり指をぺろぺろなめたりと可愛げが出てきた。お触りもOKらしい。記憶力やらはさほど期待できないが、刷り込みは効果的なようである。

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そもそもコウモリは世界中に1000種類近くも存在し、その多様性は哺乳類全体の4分の1にまで及ぶ一大勢力とのこと。始新世5250万年前のオニコニクテリスが既知のコウモリ目では最古の化石とされているが、その時点で完全に飛行に適応した体をもっていたため、彼らの空への適応は新生代最初の世である暁新世(6500万年前~5600万年前)には起こっていた可能性が高い。

白亜紀末に翼竜やエナンティオルニス類(原始的鳥類)が滅び、空のシーンに大きなニッチが広がったが、そこに小型の哺乳類が参入し夜の空を支配するのは自然な流れだったのだろう。現生の真鳥類に繋がる系統は地上棲傾向が強かったため生き残ったという説(新説「恐竜絶滅」を生き延びたのは地上の鳥だった | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)もあり、破壊された森林が数千年の時を経て復活すると、そこに様々な原始的哺乳類や鳥類が進出し、樹上棲傾向を強めていった様子がうかがえる。

 

そして時は大いに流れ、今では一風変わった愛玩動物としてホモ・サピエンスにエサを運ばせている。ざんねんないきもの、あるいは薄毛のフレンズ、または哀れな自己家畜化生物ことホモ・サピエンスが文明の自壊の果てに滅びたのちも彼らは空を支配するのだろう。そんな恐れを抱きつつも、私は今日もコウモリにリンゴを与えている。