Amygdala

Turns on

個人的2018年の古人類学注目ニュース

 

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田舎で老人と語らい、山でキノコを追い、砂浜に打ち上げられた魚の死骸を一通りつつき回した後にtwitterを開くと、そこでは相も変わらずエロい服を着せられた若い女の似姿が大量に流れ、画面の大半を埋める広告は膨らみ、カントリーマアムは縮み、日本は今日も終わり続けており、若き天才たちは今日もどこかで偉業を成し遂げ続けているらしい、ということを急に突き付けられる。

日々ホモサピがホモサピのために生み出し続ける娯楽の脆弱さへの潜在的不安からか人はすぐtwitterで虚無だ虚無だと言いたがるものなんですが、人間のために存在しているわけではない森羅万象に美しさを見い出せれば少しは気分も軽くなるような気もします。つまりお前らはもう少し中生代に生きたハラミヤ類の保存状態良好な骨格の発見に喜んだりしろ、というわけです。

……違いますか、そうですか。

 

というわけで2018年の古人類学界、個人的注目ニュースどーんと行ってみましょう。

 

ホミニンは少なくとも210万年前には中国黄土高原には定住していた

210万年前の石器を中国で発見、アフリカ以外最古 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

古人類学に付きまとうサンプル抽出の偏りについてはそもそも調査地域の偏りによるものが大きい、という指摘はこれまでも繰り返されてきました。エチオピアなどの東アフリカ、南アフリカなどでの調査は比較的進んでいるものの、それ以外の地域、特にアジア圏の調査は今まで十分に進んでおらず、それゆえにアジア圏における最近の新発見には目を見張るものがあります。今回それが中国南部で驚くべき発見となってもたらされました。

210万年前となると、180万年前ごろと言われているジョージアのドマニシ人(原始的なエレクトスとも言われているが移行的形質で分類には諸説ある)に20-30万年近く先立って中国あたりまでホミニンが到達していたことになり、ユーラシアではダントツで古い年代です。石器を残した人類の化石は今回発見されていないため、広義の祖先的なエレクトスなのか、それよりも古い形質のハビリスなのか、もしやアウストラロピテクスなのかと想像は膨らみますが、とにかくホモ属はその形成(280万年前以降)の初期から高い移動能力を有しており、ユーラシアの各地に移住を進めていたことが今後通説となりそうです。その過程で地域ごとに特殊化が進んだ種類も多くいたことでしょうし、混沌とした初期ホモの分類が今後進展することを期待しています。

 

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ネアンデルタール人の母親とデニソワ人の父を持つ交雑第一世代の人骨を発見

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45280109

https://www.nature.com/articles/s41586-018-0455-x

ついに出るものが出た感がありますね。ネアンデルタール人の親族を4世代以内に持つサピエンス化石(Oase-1 Jaw 、逢瀬ではない)はこれまでも出土しているのですが、遺伝的に距離の離れた人種同士の交雑第一世代人骨が確認されたのはこれが初であろうと思われます。

Denisova 11と名付けられたこの大きさ8ミリ×2.5センチの骨片は子供の女性と考えられており、ハイエナの胃を短期間通過したとみられています。

以前からデニソワ人も100万年以上前に分岐したとみられる遺伝的に未知の人種との混血が確認されています。やはり異なる人類種同士の混血は頻繁に起きていたうえに、かなり遺伝的に離れていてもそれが可能だったことが今回新たに確認される形となりました。

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◆こんな粉々の骨片のDNA抽出が可能だったのもシベリアの寒さがなせる技。

 

パラントロプス・ロブストスの絶滅年代が60万年前まで下る可能性

アフリカ南東部の過去200万年間の気候変動とロブストスの絶滅 雑記帳/ウェブリブログ

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◆パラントロプス・ロブストス(左)とアウストラロピテクス・アフリカヌス(右)

 

これはマニアックな情報なのであまり注目された方は多くはないのではないかとも思いますが、個人的にはかなり興味深い内容。パラントロプス属はアウストラロピテクス属(おそらくアファレンシス)から分岐し、300万年前~200万年前頃にかけてホモ属とは異なる方向に進化を遂げた人類のグループです。塊茎などのC4植物、シロアリなどを中心とした雑食性だったと推定され、肉類を交えた雑食に適応した初期のホモ属とは食性の違い等で住み分けていたらしいのですが、100万年前あたりになってくると化石の発見が減り、理由は不明ながらどうやらその辺りで滅んでしまったとされています。また、どの程度の知能があったかは定かではないにしろ、ヒョウに食べられた個体が多く20歳を迎えるものはまれで、捕食者が噛み砕けない頭蓋骨以外がなかなか発見されないということでも知られています。

今回の報道(High climate variability and increasing aridity brought an end to an early hominid species)では「According to the findings in the Limpopo region, Paranthropus robustus died out 600,000 years ago.」とあり、200万年前ほどに存在していたと思われる彼らの絶滅が60万年前まで下ると指摘されています。この時期はサピエンスとネアンデルタールの祖先と言われるホモ・ハイデルベルゲンシスがすでに現れ始めた時期にもあたり、後期ホモ属の形成時期までパラントロプスのようなアウストラロピテクスの特徴を強く残した人類が同じアフリカにいたとすればとても興味深いことです。

 

 

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