Amygdala

Turns on

ソフト・マシーン (Soft Machine)という奇妙なバンドのファンを増やしたい

ジョジョの奇妙な冒険の第5部アニメ放送が始まりましたね、作中でブチャラティたちを襲うパッショーネのギャング、マリオ・ズッケェロのスタンド*1名であるソフト・マシーンも他のスタンド同様洋楽由来の元ネタがあります。

 

ソフト・マシーン - Wikipedia

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彼らの経歴を平たく言えば、60年代後半の英国サイケシーンにPink Floydらと同時期にデビューし、サイケデリック・ロックにジャズの要素を加え闇の魔術で煮込んだような独特の音楽性を確立、名盤を数多く残したものの70年代半ばには失速し自然消滅した。というグループです。Pink Floydのようにバカ売れすることもなく、Yesのように派手な音楽でもなく、King Crimsonのように50年以上芯の通った活動をするわけでもなく、いわゆるプログレッシブ・ロックでも比較的マイナーな立ち位置のグループといえましょう。

 

私はこのSoft Machineという英国のバンドのファンでもありまして、皆さんにこのグループの良さを理解してもらうべく日々布教活動、もとい折伏を繰り返しています。ついには以下のような彼らのライブ音源を公式非公式問わずレビューするブログまで作ってしまいました。(現在更新お休み中)

 

Chronicles of the Soft Machine's Live

 

しかしこの布教活動、今一つ成果をあげられておらず、皆さんの反応もあまり好ましいものではありません。何故なのか、少し総括してみましょう。

 

 1. 音楽性がそもそも難解。

彼らの代表作として真っ先に挙げられるのが1970年発表の三作目「Third*2です。前述したサイケロックとジャズの融合を最も早く成し遂げた名作として語られる本作ですが、洋楽初心者がディスクレビューを読んで聴き、そして彼らの音楽に今後二度と触れなくなる、という最大の悲劇を生んでいるアルバムでもあります。

原因はアルバム冒頭から5分以上延々と流れる謎のノイズ。いや、それだけではありません。

一曲目にして彼らの代表曲である「Facelift」の構成はざっとこうなっています。

  1. オルガンを中心とした5分間のノイズ
  2. 曲のテーマ
  3. ファズをかけたオルガンとアグレッシブなサックスによる延々としたソロ演奏
  4. フルートによるぼんやりしたサイケな演奏
  5. 謎のミニマルなサウンドコラージュ
  6. ゆるやかに盛り上がり冒頭のテーマに戻る。


ジョジョのEDでYesの「Roundabout」を聴き、プログレに手を出した初心者リスナーを追い払うかのような抽象的でアヴァンギャルドインストゥルメンタルがここでは19分にわたって繰り広げられます。いやテーマはマジでかっこいいんだって!

このアルバムは同じように20分近い曲が4曲だけ、という攻めた構成となっており、ヴォーカル入りの曲は3曲目の「Moon In June」だけとなっています。こういった構成の長大さは「サビは10秒以内に入れろ!」と言われるYoutube世代には苦痛そのもの。みんな娯楽が溢れてて忙しいんです。

 

2.音楽性もメンバーも変化しすぎる

まずは画像を見比べていただきたい。

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◆1967年ごろ*3

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◆1977年ごろ*4

 

 ……同じバンドを名乗るのは無理があるでしょう。

ちなみに二枚目の画像ではオリジナルメンバーがキーボードのマイク・ラトリッジだけになっていますが、彼もほどなく脱退しオリジナルメンバーが誰一人いないバンドとなりました。音楽性も初期はゆるふわサイケポップを演奏していたのがだんだんとジャジーインストゥルメンタル傾向を強めていき、時代性もあってクロスオーバーフュージョンに接近、最後はミニマルやテクノにまで接近する寸前でグループの核がなくなり自然消滅、数年後思い出したかのようにクラシカルなイージーリスニングアルバムを残して解散しました。

 

あまりにも変化する音楽性ゆえに他人に勧めづらく、ゆえにリスナー同士が出会っても話が噛み合わないことがほとんどです。

例えばギター好きは有名ギタリスト、アラン・ホールズワースが在籍した後期のフュージョン路線な「Bundles」を推し、

◆ハードでわかりやすいですよね。

 

サイケデリック好きは2作目「Volume Two」を推します。かくいう私も最も好きなアルバムです。

Soft Machineで一番好きな曲です。クラムボンもカバーしてるぞ!

 

前述した「Third」で唯一のヴォーカル入りナンバーを作曲した、ドラマーにしてヴォーカル担当のロバート・ワイアットは脱退後ソロ歌手としても支持を集めました。決して歌唱力があるわけではないのですが独特の個性ある歌声を持っており、坂本龍一ビョークの作品にも招かれるなど、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして長年愛されています。

 

3.ルックスがなんかむさくるしい

重要な条件です。同じ洋楽でもThe BeatlesQueenがなぜ長年にわたり愛されるのか?やはりポップな音楽にはポップなルックスが大事なのです。

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この頃はまだ良かった。

 

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たった2年後の姿。

 

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ああもう駄目だ。

 

音楽性が難解になるにつれて度重なるメンバーチェンジ等でルックスもだんだんとオッサン化(実はみんな20代か30代前半なので若い)。ハゲとヒゲのメンバーばかりに。何歳になってもナイーブ感溢れ前髪で目元隠しちゃってる系邦ロッカーを愛するようなサブカル女子*5からすればこれはバンドマンではなくなんか年齢不詳で怪しい男の集まりでしかないでしょう。

 

4.とにかく

 

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ざっと見ても初期は「あんまり歌が上手くないサイケ」、中期は「キマりすぎてて怖い音楽」、後期は「爽やかさのないフュージョン」と、日本人に受けない要素たっぷりのグループであることは何となくご理解いただけたでしょうか。

しかしその落ち着かない音楽性がゆえにもたらされる過渡期の面白さ、ロックとジャズが奇妙に入り混じった瞬間には独自のカタルシスがあり、一度入り込めれば音楽への新たな扉が開かれることは間違いありません。一回聴いて好きじゃないと思った方はそのうち思い出した頃に聴いてみてください。

 

……とはいえ、普段から70年代の洋楽に親しんでいないリスナーがいきなり聴いて好きになるような音楽じゃないということは間違いないんで、そこはご了承下さい。

 

◆ワイアット/ホッパー/ラトリッジの3名だけで演奏される「Moon In June」。途中ドラムスティックを落としても演奏をやめない姿勢がロックっぽくていい感じ。

 

*1:効果が今一つパッとしないっぽいが、実は主人公チームを一番追い詰めたスタンド使いだった。メタリカみたいな戦闘に全振りのスタンドより日常で汎用性ありそうだし。

*2:レコーディング時のメンバーはマイク・ラトリッジ(キーボード)、ヒュー・ホッパー(ベース)、ロバート・ワイアット(ドラム、ヴォーカル)、エルトン・ディーン(サックス)、この4名が中心だった時期が一般には全盛期とされています。

*3:左からケヴィン・エアーズ、ロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、デヴィッド・アレン。アレンはのちにフランスでGongを結成。

*4:一番左のカール・ジェンキンスはのちにアディエマスというイージーリスニング、癒し系音楽で成功をおさめます。

*5:Art-Schoolクリープハイプなどへの傾倒を示すホモ・サピエンスの亜種、V系を愛するバンギャとは異なる生得的ニッチによって棲み分けている。