Amygdala

Turns on

ピザとパスタに飽きた奴から死んでいく

この記事の続きです。

なんやかんやでイタリアにいる。

 

 

10/30 カレンツァーノ - ローマ

昨夜ルカに連れられたどり着いた投宿先だが、誰の家なのか皆目わからない。とにかく今日我々の運転や手伝いを行ってくれるのがアンディ(仮名)だ。アンディは体毛が濃く全身に恐ろしげなタトゥーの入った心優しい男だ。口癖は「カッツォ!」(ちんこの意、Fuckみたいな用法)

アンディ曰く昨日の嵐でヴェネチアは完全に水没、これから向かうローマも街路樹が折れ道が塞がったりとかなり被害があったらしい。

機材はまだ何も来ていないが、自家製いちぢくジャムやらクラッカーやらで朝食とする。

 

昼頃にはフィレンツェからリーダーが到着。なんと我々の機材を携えている! と思ったのもつかの間、まだ機材の半分はモスクワにあるらしいということが判明する。とはいえ、自分の分の荷物とベースは戻って来たので安堵した。

 

結局、ギターエフェクターやドラムは借り物でなんとかするということでツアー初日のローマへ向かうことに。道中スーパーに寄り、巨大なナスやパプリカを確認。サラミやソーセージなどの加工肉やチーズ、バター等の乳製品が極めて安価な上に高品質なので購入し道中弁当とする。

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途中寄ったピザ屋で初ピザ。うまい。

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夜にはローマに到着。当然ながら建築物ひとつひとつの重厚さ、歴史さえ感じる太い街路樹、そして手の届く所全てに描かれたグラフィティの数と最悪の運転マナーに気圧される。ほとんどの人間がスマホの画面のみを見ながら運転しており、所構わず行われる強引な駐車は深刻な渋滞をあちこちで引き起こしていた。アンディ曰く「ローマ式駐車だ」とのこと。

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本日の会場に到着。犬がふてぶてしくも入り口を塞いでいるが、オーガナイザーの犬らしく誰も蹴ることはない。リンゼイ・クーパー似のバーテンダーが良い感じだ。

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なにやら今宵はやたらマニアックな機材のシャレオツバンドと対バンらしい。金持ってそうなイタリア人たちだ。

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サウンドチェックを行いケータリングのパスタを食す、がライブがいつまでたっても始まらない。いつになるかわからないのでビールやグラッパやラムを大量に煽り、気がつくと意識を失っていたらしく出番直前に起こされた。

この日は初日らしくこのツアー用のスタンダードなセットを普通に演奏。客は入っているのだが今ひとつ反応がクールというか盛り上げられず東京で演奏しているかのような錯覚を覚えた。物販もさほど売れずこれはPOPや売り場環境の改善が必要。

 

帰りにギャラを受け取りに行くとなんとオーガナイザーが「客の入りが良くない」などとゴネて50€もギャラを減らされた。

一応客は入ってただろ!盛り上がらなかっただけで!!!カッツォ!!!

なんとも冴えない後味のままアンディの運転で投宿先のオーガナイザー宅に向かうとそこはむせ返るような犬の匂いが立ち込める空間だった。てか犬小屋そのものの匂いだ。

 

窓を開けローマの排ガス臭を取り込んだ方がマシという悲しい状況の中、あのふてぶてしいクソ犬の毛だらけなベットに倒れ就寝。Wifi環境も貧弱で今期アニメ全然追えてないな……という悲しさがクラクションの遠鳴りと相まって胸に去来する。

 

 
10/31 ローマ - カレンツァーノ

窓を開けっ放しだったので寒さで目覚める。一晩で犬の匂いに慣れたつもりだったが、シャワーを浴びタオルを借りるとそこも犬の毛だらけで閉口する。

昨日のギャラの件や犬の匂いの怒りを込め家にある食材を拝借しペペロンチーノを製作。使った後はきちんと食器を洗い現状回復、日本人の礼儀正しい印象は保たれた。

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今日はライブがないのでローマ観光をしようとアンディが提案、荷物をまとめ出発する際何故か入り口に逆さまのオーネット・コールマンが鎮座していた。これはいかなる兆しか。

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その後コロッセオを望む斜面で記念撮影したり観光客気分を味わう。人が多すぎるのでもしブチャラティが闘ったりしてたら速攻で警察来ると思う。写真は凡庸な観光客のそれなので割愛。

アンディの運転で3時間半かけカレンツァーノに戻る。物や人が多すぎてあまりいい印象を残さなかったローマ界隈だった。

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スーパーで再び食材購入、剥きうさぎも確認。スカモルツァチーズが1€でたっぷり、サラミもほとんど似たような価格で美味なのでサンドイッチとする。ビールを飲みながら22時ごろ意識を失う。

 

11/01 ファエンツァ

朝、すでにパスタとピザと乳製品に飽き始めているので台所でこっそりと日本から持参したうどんを調理。薄切りの牛肉と刻みキャベツ(?)を具にし固形鍋スープと醤油で味を決め完成。

いざ食らえばダシのうまさに感涙、思えばこちらに来てからスープ系に全くお目にかかっていなかった。

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昼にはエドと共にモスクワ組の機材も届き、アンプやドラムセット、ルカの家に届いていた150枚のLPもバンに詰め込んで今日から本格的なツアー開始である。3時間ほど運転しファエンツァという雰囲気の良い地方の街に到着する。

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本日の会場はレストランらしく、機材を全て下ろし、ドラムを組みアンプを繋ぎサウンドチェックを行う。毎日の業務だ。

美しいレストランでワインと共に供されるケータリングだが、全てヴィーガン料理なので出てくるのは野菜とかパスタのみ。見た目重視。レバニラとか食いたい。

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相変わらずスタートは遅く、ワインも飲みすぎたので24時くらいのライブ開始まで車で眠る。寝ている間にデザートが供されたらしいことを後で知る。

本日は会場の雰囲気に合わせまったり目のテンポかつ音量控えめで演奏開始。セットリストも平常運転で聴かせる演奏を意識して展開した。

終演後観客から「ミッドの音作りが最高だ!」というお褒めを受ける。アンプのおかげです。*1

物販の売れ行きも180€くらいでまずまず、良い雰囲気かと思いきやエドと女性店主がなにやらもめている。というのもルカがブックした際にはもっとスマートでソフトなイメージのバンドとして先方に伝わっていたらしく、「Too Loud」であるということで店主はご立腹であるらしい。日頃に比べソフトな演奏を心がけて尚この様子なのだから、ヨーロッパの音量事情はどうなっているのやら。とはいえ、店のおごりでグラッパを何杯も飲みいい感じに。

機材撤収は明朝でいいとのことで、店主の家に投宿する。猫の毛だらけなベットに入り寒さで何度も目覚めながらも断続的に眠りにつく。

 

11/02 ルチェーラ

10時ごろリーダーに起こされる。機材撤収のために店に行くとなんとピザやケーキやカプチーノ(ちょっとぬるい)をごちそうしてくれたうえに帰り際には水のボトルを何本もくれた。なんていい店なんだ。また来たい。

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本日はルチェーラという場所でシークレットギグである。先にお断りしておくと、この日は人生最悪の恥をかいたため写真も記録も少ないものとなっている。ご了承ください。

4時間か5時間ほど運転しルチェーラに着いたが、日も暮れ電灯もない妙な荒地のような場所でありこんな地域でライブができるのか疑問を覚える。今日の会場はそんな地域にポツンと佇む謎の建物らしい。ホテルカリフォルニア in ルチェーラといったところか。

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今日はいけない感じのシークレットショウなので、PAのセッティングなども色々と手作り感が強いものとなっている。

30代くらいの女性オーガナイザーも何やらセンスの悪い田舎の女子高生のような服装をしているし、内装も妙なセクシー感があって不気味だ。ホテルでもなさそうだし、なんなんだこの施設。

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ケータリングはピザとステーキ、またピザかよ…… いい加減ウンザリしてくる。

そして1時間後、サウンドチェック後にサウンドマンから受け取った■■■で■■野郎になった私は演奏中おかしなことに気付いた。全てのテンポが遅い……いや、自分の感覚だけが加速している??? ジョルノに殴られたブチャラティ状態である。

ふと指先を見ると、ちょうど指板の上のフレットたちが分裂し溶けていくところだった。参った、これじゃ何もわかりやしない。そのうえ低音は全て全身に響き、弾けども弾けどもちっとも自分の音が認識できずこれはちょっとまずいことになったぞ、と思った刹那ココロにスキが生まれついにミスを連発。

薄れゆく正気の中これは続行不可能と判断し、ベースを置いてステージから遁走、トイレに駆け込んだ。

 

 

……終わった。

 

 

私はトイレの隅で頭を抱えて震えていた。

悪夢のような状況、しかも完全に自業自得である。様々な悪しき妄想が脳内を駆け巡り、自分がイタリアの怪しい店のトイレでぶっ倒れている状況を認識するたびにパニックに陥った。残されたメンバーたちが別の曲を演奏し場を繋ぐ様子が遠鳴りに聴こえる。

しばらくするとエドが来て「大丈夫だ!もう大丈夫だ!俺がいる!」と介抱してくれ、予想に反してメンバーたちも私を殴るでもなく許してくれた。薄れた意識の向こうでエドが繰り返し言う、「大丈夫だ!だからステージに戻ろう!!」

 

……え、もう一回やるんですか??!?!??

 

逃げ出したい気分を抑えなんとかフラフラとステージに戻り、最初から演奏をやり直す。だが一曲短縮しようとリーダーがメンバーに伝えたにも関わらずギター担当のメンバーが展開を勘違い、そのまま演奏が終わってしまった。リーダーからすればメンバーの統率がとれず踏んだり蹴ったりであろう。

私はフラフラのままアンプやドラムを撤収し逃げるように車に乗り込んだ。そしてどうしようもなく情けなく泣きたいような気分でホテルのベッドにくるまって一日を終えた。

 

11/03 メッシーナ

起床、昨日の体たらくを改めて皆に詫びる。

皆の許しを得たところで気持ちを切り替えシチリア島メッシーナへと爆走。

ドライブ用のBGMをメンバー交代で担当したが、誰かがスガシカオを流し始めた時にエドが「What’s the shit!?」と難色を示す。やっぱそうですよね。

どこまでも続くオリーブ畑、ブドウ畑、だいぶイタリアらしい景色にも飽きてきた。途中スーパーに寄り買ったサラダとサラミを適当に食う。不味いわけではないのだが、毎日こんな調子で不安になる。米食いたいです。

 

途中トイレという名目でどこかの高架下に停車。いざズボンを下ろそうとすると彼の虚ろな目と見つめ合う。

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ピザとパスタに飽きた奴から死んでいく……

そんな言葉が脳裏によぎった。結局ルチェーラから5時間ほど運転しシチリア島行きのフェリー乗り場へ。

フェリーを待つ車の列には窓掃除の仕事をするアフリカ系青年が集まってくる。どこからかの移民だろうか、などと考えながら窓を洗ってもらう。その間エドはずっとAreaの「1978」を流している。超名作アルバムですがもうそれ流すの4周目ですよ。

 

 

フェリーであっという間に対岸、シチリアへ。会場付近は荒涼とした工場地帯で相変わらずこんな場所に客が来るのかと不安にさせられる。

今日はPAエドが兼ねる。昨夜はバカなジャップの面倒を見、何時間も運転し続けた後にPAも担当する彼のタフさに感謝。

 

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本日より物販コーナーの設営を開場前に行い、POPを新しいものにする。そのおかげか会場のスタッフたちが先に集まってLPやTシャツなどかなり買ってくれた。幸先良いスタートである。

ケータリングはフォカッチャとショートパスタの類。美味いっちゃ美味いけどもう完全に飽きている、油っこいし。ビール飲み放題の手配を頼んであるのでとにかくビールはたくさん飲む。オーガナイザーがポートレートを撮らせてくれと言うので地下のレンガ造りの部屋でポラロイドやデジカメでバシャバシャ写真を撮られた。

 

さて、私の心配もよそに気づけばかなりの人が会場に詰めかけている。イタリア公演の常に漏れず本日も24時過ぎに演奏開始。

前日の失敗の反省から丁寧かつダイナミックレンジの広さを心がけ演奏開始、暖かい反応にも恵まれ当ツアー初のアンコールもやるなどかなり盛り上がった。終演後は物販も盛況で、こんなところにもファンがいたのかと思うくらいマニアックなファン相手にサインや写真撮影に応じる。自分がレコーディングに参加していないアルバムにサインするのは妙な気分だ。

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実は私の業務として毎公演終わるごとにオーガナイザーからアンケート用紙を受け取らなければならないのだが、この日はオーガナイザーがDJを兼ねておりパリピどもを踊らせ続けているのでなかなか受け取れない。

 

気がつけば私は楽屋で意識を失っており、まだ爆音で音楽が流れ続けているので時計を見ると時刻はすでに午前4時。どんだけ元気なんだ。

4時過ぎにやっとDJタイムも終了、なんとか機材を運び出しアンケートを受け取ったあたりで豪雨が再び我々を襲った。フィレンツェの悪夢再び、である。

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用意された近隣のホテルになんとか逃げ込み、機材を片付けベッドに入った頃には午前5時過ぎになっていた。激しい雷雨の音を聴きながら就寝。

 

 

 

(続く?)

*1:ドンシャリベースはあまり好みじゃないのでアンペグ派だ。