Amygdala

Turns on

あるアニメのファンが原作者にブロックされるまで

 

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ひとつ懺悔をしたい。

 

とはいえ個室で教誨師や司祭に対してする類のものではなく、この記事を通して不特定多数の読者の皆様に対して行うものだ。該当の作品やそれに関わった方々を貶すような意図は全くないためここではあえて作品名を伏せ、厄介なファンがやらかして原作者の怒りを買うに至った経緯のみを少し長くなるがご笑納いただきたい。

 

表題の通り、私は5年ほど前からとあるアニメのファンとしてネット上で活動していた。それは女子高生がわちゃわちゃする類のギャグ作品だったが、作画はお世辞にも安定しているとは言えず、枚数制限がネタになるほどに低予算らしく、放送時間は深夜3時を回ることさえあり、何より主役声優たちの多くを未デビューの研究生たち(なんと現役女子高生だった)から起用したおかげで第一話は経験不足による演技の不安定さが明白なものだった。とはいえ、原作のおかげでギャグにはキレがあり、脚本も原作とアニメの媒体の違いを生かした素晴らしいもので、視聴一回目の違和感など忘れて次第に引き込まれていった。

 

当時私は某大学の一年生として独り暮らしを始めたばかりで、初めて自由に深夜アニメを視聴できる環境になったということもあって非常に新鮮な気持ちで日々放送されるアニメを楽しんでいた。

しかしその頃は「共通の作品のファンと交流する」という発想すらなく、せいぜい2ちゃんねるの実況スレで実況したり本スレを眺めたりというような共有のあり方で満足しており、そのアニメも数ある作品のうちのひとつという認識でしかなかった。漫画アニメラノベゲーム等のファンの雰囲気には元々馴染めないものを感じていたし、オフ会やコミケなどもどこか遠い世界のことでしかなかった。

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遠いどこかの光景

ところが、である。

 

季節が変わり、全12話の放送が終了すると私は予想だにしていない喪失感に見舞われた。それは来週からあのチープでメタな、でも何とも言えず愛おしい作品が見られないことへの苦痛だった。

幸か不幸かインターネットは作品への攻撃的な評価も包み隠さず教えてくれる。そこで知ったのは、作品の円盤(DVD・BD)が初動3桁しか売れていないこと、声優たちの(特にシーズン前半)への酷評、特に信条もなく作品叩きを行ってアクセスを伸ばそうとするまとめアフィブログたちの数の多さだった。2019年現在のインターネットにおいて2ちゃんねる(現5ちゃんねる)、そしてまとめアフィブログの存在感は見る影もないが、5年前はミームの一大発信地としてニコニコ動画と並ぶ存在だったことを記憶している方々も多いと思われる。時の流れは速い。

それはさておき、この一件は自分が良いと感じた作品が商業的な理由から低い評価を与えられ、「クソアニメ」ネタとして消費されることへの違和感を初めて感じた瞬間でもあった。俗に言う「マイナー沼」に人がハマる時、このような視野の狭窄が度々起こることを、読者の方々は留意されたい。

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入ってしまえば心地よい

 

時は半年ほど流れ、私は様々な事情から大学をやめニートに戻っていた。

作品の円盤も買い、本スレも欠かさず見ているうちに、なんとその作品の同人誌が出ることを知った私はついに人生初のコミケに赴くことを決意する。商業的な期待の薄さから原作、円盤、サントラ以外のグッズがほぼ皆無なこの作品において、ファンアートの少なさも言うまでもなく、スレの勢いも落ちていた。周囲に視聴者もおらず、当時の私は作品への思いを誰かと共有したくてならなかった。

そして酷暑の中集う異様な数のオタクたちにカルチャーショックを受けつつも、初めてリアルで出会ったファン同士の交流に感激した私は、SNSのアカウントを彼らと交換することとなった。当たり前だが、界隈が狭ければ狭いほど不快な思いをすることは減るものである。

そこには何から身を守っているのか缶バッヂを全身にまとい、徒党を組んで派閥争いを演じるようなイキリオタクは誰もいなかった。

また当時は原作も続いていたこともあってファン同士の話題も尽きず、今ではシスヘテジャップオスとしてギャルゲー二次嫁に狂う私も、当時は作中の百合カップリングに想いを馳せる純粋さを持ち合わせていた。とにかく、そんな予想以上の居心地の良さに私はすっかりハマってしまっていたのだった。

 

さて、当作品でデビューした4名の新人声優たち(A,B,C,D,と仮に呼ぶ)*1はその後(そのうちAとBの2名が揃って出演した一作品を除き)、ソーシャルゲームに時々名前が出る程度で次の出演作がなかなか決まらなかった。結論から言うと最初ファンからの注目が高かったA,Bの2名はその後密かに声優業界から引退することになるのだが、それを知らない私は様々な無関係なサイトに好意的な内容をボムするという荒らしそのものな方法で「サジェスト浄化」を試みたり、Naverまとめを作ったり、その声優の親族の元(偶然にも人前でパフォーマンスを行う職種の方だった)へと赴いてメッセージを送るなど、完全にヤバい領域に足を踏み入れていた。狭い界隈においては往々にして価値観、倫理観が先鋭化しがちであることについて、連合赤軍やオウムの例を持ち出すまでもなく皆様はご存じだろう。

とはいえ、当時の所属事務所に送った応援のメッセージ等についてのレスポンスが本人から得られたりして私は舞い上がっていた。認知やら界隈やらと浅ましさの極みのような発想にブレーキがかかることはなく、この後も厄介オタクへの道を突き進むことへとなる。

 

(BGM:パリは燃えているか

 

そんな中、一つの契機が訪れた。原作の連載終了だ

アニメ放送からちょうど一年ほど経ち、作者も描きたいことは描き終えて次の作品を作りたいという至極真っ当な理由での連載終了であったらしい。アニメ化されたとはいえ今一つ人気に火がつかない作品を一旦畳み、新たなスタートを切ろうという漫画家としての姿勢には十分共感できる。

しかし、当時の私はその早急な連載終了そのものに対して納得することができなかった。生存者バイアスに他ならないとはいえ、自分の周囲では当作品についての話題が満ちていたし、声優たちの動向も気がかりなままだ。

そこで私は非公式のファンサイトをブログ上で作成、公開することにした。作品に関する情報をファン同士が共有し、また作品を純粋に楽しむ意見をまとめることで作品に対する酷評ばかりが目立つ検索結果に対して対抗することができるだろう。

 

……と当時は大真面目に考えていたのだった。どう考えても1ファンとしては気負いすぎである。

そして2年近くにわたり、作者のSNS更新、声優の出演情報、同人誌の頒布、当時の実況スレ、とにかく作品に関する情報はなんでもまとめ、更新し続けた。twitterのリアルタイム検索も一日中監視し、作品への好評も悪評も構わずいいねを押し続けた。botではなく手動でそれがなされていることに気付いた人々はそれに恐れをなしたが、自分としてはそれが日常になってしまっていた。それは完全にニートのなせる業でしかなかった。

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一日中作品のことを考えていた

その後も作品の合同誌企画に関わって偶然にも壁サー経験をすることができたり、作品のネタとニュースをこじつけて関連付けた記事を投稿し続け、作者にクソリプを送るなど平和な厄介オタクライフを満喫していたが、ついにそんな日々も終わりを迎える。

 

それが表題にもある通り原作者本人からのtwitterブロックだった。

 

経緯は単純である。原作者のtwitterアカウントがとある嫌がらせアカウントからの攻撃で凍結されてしまったことがあり、私はその様をキャプチャし個人アカウントから「ウケる」とだけキャプションをつけて投稿した。そして新たなアカウントを作成した原作者をフォローし直そうとした所で彼からのブロックに気づいたのだった。

 

そういった安易な発言を行うファンに不快感を覚えた可能性もあるし、日頃から自分の発言をしつこく拾う過去作のファンサイトに不快感を覚えた可能性もある。また、単純に怪しげなアカウントを一斉にブロックした可能性もある。今となっては詳細な理由はわからないが、とにかく原作者直々にアンチ認定されてしまったことにより、私のその作品に対する熱狂は嘘のように冷めてしまった。

作品自体は素晴らしいと思っており、未だにファンでもあるのだが、ファンサイトの更新はその日を境に完全に停止、作者の新作も追わなくなってしまった。自分があれほど熱中していたことに薄気味悪さを覚えるほど、その落差は大きなものだった。

そして気が付けば、アニメの放送から4年もの月日が経過していた。

 

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これが一人の平凡なオタクの懺悔の全てである、と言いたいところだが、ぼかした部分やとても書けないような内容も多く、その辺り自己弁護的な内容になってしまったのはご容赦願いたい。

 

さて、往々にして人は作品への愛とそれ以外の要素を混ぜてしまいがちである。それはファン同士の人間関係であったり、二次創作への偏重であったり、声優への馴れ馴れしさであったりと、あまりにもSNSとの相性が良いものばかりだ。そして酒や麻薬のように、若ければ若いほど人格への影響も大きい。自分にとってこの日々はとても楽しいものだったが、同時にとても人には言えないような後ろめたさも伴うものだった。

それでもなお、人に言えないようなことに夢中になれることは最高だ、という想いは変わらない。魔法は必ず解けるものだし、今夢中になれること以上に信じるべきものがこの地上にはもう残っていないのだから。

 

 

*1:現在のC,Dの両者だが地道に活動を重ねた結果、某覇権コンテンツのCVをしたりと大活躍している。彼女たちの努力に敬意を示すとともに、人生の複雑さに感じ入る次第である。